ウペペサンケ山(東大雪)1848M 2003.03.01



山に登ると、日常の雑多な思いは面白いほど薄れ落ちていき、 代わりに仕事や生活や言葉の覆いをはぎ取られた自分の、 生命だけの姿が現れ出る。凝縮され、圧廷され、抽出され、 削ぎ落とされていくそれは、自分でも驚くような異様な姿を しているのが常だったが、その体感を一言でいえばこの世の ものでない覚醒と麻痺だった。登り続けるうちに鼓膜が耳な りを発し、皮膚は寒さを感じなくなり、筋肉や心臓の苦痛が 陶酔になる。その麻痺が、ほとんど死に向かう爆発や開花の ようになる。ザイル一本で天空にぶらさがった身体に満ちる 歓喜は、生命の最期を待ち望む一瞬に近く、底雪崩の轟音に 耳をすます身体の鈍麻は、おそらく死そのものの鈍麻に 近かった。その異様な一刻一刻が、或る強烈な心地よさと 解放感に変わる瞬間があった。   〜マークスの山〜



前夜は興奮で2時間ウトウトしただけだった・・17年前ニペソツへ登ったときも杉沢の出合いでは一睡も出来ぬまま登った記憶が・・。昔から遠足前夜は眠れなかったし。午前1時に家を出て糠平湖畔メトセップ橋に着いたのはわずか1時間後の午前2時、幕別町に生まれ住んでいることに感謝・・それにしても暗い 上の写真は国道の上 橋の名を記す看板だけが光る。ヘッドライトを点け午前2時30分出発・・駐車場から林道入り口まで国道を数百メートル歩くのだが・。こんな時は誰にも会いたくない(と言うか会った相手を驚かせたくない)。重い荷物を背負ったまま駆け足で林道に滑り込む。一週間前にラッセルしておいた自分のトレースだけを頼りにひたすら進む。小動物達が自分のトレースを利用している・・何となくいい気分だが この闇夜 静けさ・・少々ビビリながら進んでいると光の中にいきなりエゾ鹿の死体が!写真を撮る余裕も無く早足で逃げる。この後も意味不明な物音についついペースがあがる。頼りになるのは満天の星空のみ。



出発して3時間(8`)、さすがに先週のラッセル効果と恐怖心で前回より25%も早い3時間で林道終点。ようやく日の出を迎え振り返るとクマネシリが・・山スキーをはいたままここで朝食。あんこ餅にゼリー飲料、チーズ 背中には重たいほどの食料。6時30分登り始める・・支尾根までの急な登り・・山スキーの限界を超えた登りにいきなり汗。1時間ほどモガイテ支尾根上に立つ。急に風が強くなる。吹雪いて帰りの降り口を見失うと怖いのでピンクテープを樹にくくりつける。支尾根は期待とは裏腹にアップダウンが激しく風の割りに締まってもいない・・先の見えぬ尾根・・1時間程で硬く締まってきた!ここでアッサリとスキーをデポ。後はツボ足で軽快に進む・・しかしまもなく頭までも埋まる地獄のラッセルに耐え切れず尾根を下り再びスキーを装着。



気を取り直して再び進む。不思議に尖った山々も遥か下に見える。(溶岩で生成された山だとか・・)9時ウペペの本尾根である1595ピークに到着。流石にここまで来ると雪面はツルツルのカチカチ。直下でスキーをデポしてアイゼン装着。風が強くて怖いのでストックもデポしてピッケルに持ち替える。ここまでたどり着けば後は夢のような尾根歩きだ・・時間も予想以上に早い。








夢に見たウペペの尾根、天気は快晴。遠く日高山脈、阿寒の山々、十勝岳連峰、見えていないのは山陰のニペソツだけ。眼下には糠平湖・・そしてタウシュベツ橋梁もはっきりと見える。程なく菅野温泉コースとの合流点。この先もダラダラと快適な尾根が続く。時折ハイマツ地雷を踏むが苦にならない。








後ろを振り返ると美しい尾根に下界の十勝地方。この辺に来て快適な尾根歩きのはずが段々と怪しくなってきた。天気は最高なのだが南からの強烈な風、風、風、野塚岳で凍傷になった頬を思い出しとりあえず目出し帽とゴーグルを装着。それにしてもこの烈風・・言葉がない。










午前10時 1696を過ぎ最後の登り・・あと15分も行けば東端の頂上かという地点で身の危険を感じるほどの風 そして寒さ。四這いになりながら更に進んで見るがどう考えても怖いので少し降りて風の当たらない斜面へ避難。ここで携帯電話を取り出し母さんや知人にメールを打つ。休んでいる内にすっかり登る気も失せ、妙に納得してあっけなく下山決定。冒頭に書いたマークスの山とは大違いだ。









それでも降り出すとこんな素晴らしい斜面が惜しくてフラフラと横にそれ遊ぶ。















それにしても下りは早い、寒さも手伝って駆けるようにスキーデポ地点。途中アイゼンをスパッツに引っ掛けまたまたかぎ裂きに・・もう補修だらけでボロボロなのに追い討ちをかける。カバノアナタケはこんなに人の来ない所まで来ても一向に現れない・・国道脇には今もカバタケハンターがうようよしているはずだが・・












尾根の直ぐ下にはこんな樹林帯が・・・ここなら一人で雪洞を掘り快適な泊まりが可能か・・来年の冬に必ずまた来よう。 下りはスキーをザックにくくりつけツボ足。本来ならこの斜面でスキーを楽しみながら一気に下るはずなのだが・・急なアップダウンに立ち木、単独とあっては怖くて駄目。11時30分林道終点に到着、昼食を済ませワックスをたっぷりと塗ってスキー装着。林道なら心配ないハズ。ところがこのメトセップ林道は結構な無理をしてかなりの標高地点まで達しているだけあって中々の急勾配だ、ワックスも効いて怖いくらいスピードが出る。トレースを外して2回程大転倒。後半かなりのベタ雪でも林道終点から8`を1時間15分程で国道へ生還。久しぶりに三股山荘へ寄り山菜ラーメンを食べる。山荘で8名の若い女性達と一緒になる、話を聞くと岩間温泉(施設なし野湯)までの12キロを歩くスキーで行き温泉に浸かって来たとの事・・自分の行った先を悔やむ。